肺炎球菌ワクチンQ&A

このウェブサイトは肺炎球菌ワクチンについての啓発を目的として日本臨床内科医会が開設したウェブサイトです。

肺炎球菌ワクチンQ&A

肺炎は、悪性腫瘍、心疾患についで我が国における死因の第3位であり、また、肺炎による死亡者の96%以上が65歳以上の高齢者であるとされています。肺炎の原因菌としては肺炎球菌が最も頻度が高いことが広く認識されています。そのため、肺炎球菌ワクチンの接種が、高齢者の肺炎予防に貢献することが期待されている状況です。肺炎球菌ワクチンには、23価多糖体ワクチン(PPV23)(ニューモバックス)と13価結合型ワクチン(PCV13)(プレベナー)があり、日本では、どちらのワクチンも65歳以上の高齢者に接種可能です。
肺炎球菌ワクチンQ&Aでは、肺炎球菌ワクチンの接種に関連した疑問とその解答をまとめています。
Q1. 侵襲性肺炎球菌感染症とは?
A
肺炎球菌は主に気道の分泌物に含まれ、唾液などを通じて飛沫感染します。小児では多くで常在細菌叢の中に定着しています。日本人の約3~5%の高齢者では鼻や喉の奥に菌が常在しているとされます。
気管支炎、肺炎、敗血症などの重い合併症を起こすことがあります。肺炎球菌によって引き起こされる感染症の中で、肺炎球菌が髄液、血液、関節などの無菌部位から検出されるものが侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease: IPD)です。肺炎球菌性肺炎で菌血症がみられた場合はIPDとなります。
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Q2. 肺炎球菌感染症の高齢者における重要性は?
A
肺炎球菌は肺炎の原因菌として最も多い細菌です。肺炎に罹患しても多くの場合は適切な治療によって改善し治癒しますが、入院や自宅安静によって日常生活動作(Activities of Daily Living: ADL)が低下して、その結果介護を要する状態に陥る可能性が高まります。また、全身に肺炎球菌が拡散する侵襲性肺炎球菌感染症に陥ることもあり、これは致死的病状です。肺炎球菌ワクチンの接種による肺炎球菌感染症の予防は高齢者の健康維持にとても重要だと考えられます。
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Q3. OPA活性とは?
A
肺炎球菌の表面に存在する莢膜多糖体(ポリサッカライド)は、肺炎球菌が宿主の白血球(好中球)に貪食されるのを防いでいると考えられています。莢膜多糖体に対する抗体と補体が菌に結合することをオプソニン化(opsonin effect)と言います。オプソニン化されると肺炎球菌は好中球に貪食されるようになります。ワクチンによって誘導されたオプソニン化貪食活生(opsonophagocytic activity: OPA)が肺炎球菌ワクチンの効果の指標として測定されます。
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Q4. 莢膜多糖体(ポリサッカライド)ワクチン(PPV23)と結合型ワクチン(PCV13)の免疫機序は?
A
PPV23には肺炎球菌の莢膜多糖体が抗原として含まれていて、B細胞を活性化します。活性化されたB細胞の一部が形質細胞に成熟しlgGを産生します。B細胞のみの活性化であるため、免疫学的な記憶は誘導されません。効果の持続は数年と考えられます。
PCV13では、肺炎球菌の莢膜多糖体にキャリアタンパクが結合しているため、B細胞を活性化し形質細胞に成熟させてlgGの産生を誘導するだけでなく、樹状細胞を活性化してT細胞も活性化します。そのため、メモリーB細胞が誘導されて免疫記憶を誘導します。また、PCV13(プレベナー13®)は、キャリアに無毒性ジフテリア毒素が使用されており、さらに、免疫応答を高めるためにアジュバントとしてアルミニュームアジュバントが加えられています。
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Q5. 肺炎球菌ワクチンの効果のエビデンスは?
A
PPV23(ニューモバックス®NP)のエビデンスとして、日本での高齢者介護施設や地域の高齢者を対象とした試験において、肺炎予防効果や65歳以上の高齢者で肺炎の医療費の削減が報告されています。
また、65歳以上の肺炎患者を対象にした、Test-negative designの試験で、肺炎球菌性肺炎の減少が示されています。
PCV13(プレベナー13®)のエビデンスとしては、オランダでの65歳以上84,495人を対象とした大規模な無作為二重盲検比較試験(CAPiTA試験)で、侵襲性肺炎球菌感染症の予防効果と共に、高齢者での肺炎球菌による市中肺炎の減少が示されています。
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Q6. 肺炎球菌の血清型と血清型置換とは?
A
肺炎球菌には 93 種類の血清型があり、PPV23(ニューモバックス®NP)は含まれている23種類の血清型に効果があります。この23種類の血清型は成人の重症の肺炎球菌感染症の原因の約7割を占めるという研究結果があります。
小児への結合型ワクチン(PVC)であるPCV7が導入され、さらにPCV13に切り替えられた米国では成人におけるIPDに占めるPCV7、さらにPCV13に含まれる莢膜型による侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の割合が低下し、これは小児へのワクチンによる集団免疫効果と考えられています。日本でもPCV7に含まれる莢膜型のIPDの割合が成人でも低下していることが観察されています。このようなIPDの原因となった肺炎球菌の莢膜型が変化していく現象が血清型置換と言われます。日本でもPCV13の小児への接種が定期接種として進められていることから、PCV13に含まれる莢膜型の肺炎球菌感染症が減少していくことが予想されます。カバー率というのは、肺炎球菌感染症の原因となった肺炎球菌のうち、その莢膜型がワクチンに含まれている率ですが、PCV13のカバー率は今後日本で低下していくことが予想されます。
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Q7. 高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種制度はどう変わったか?
A
高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種は平成26年(2014年)10月1日から開始され、平成27年度から平成30年度までは、該当する年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方と、60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方が対象でした。使用されるワクチンとして認められているのはPPV23のみでPCV13は対象とはなっていませんでした。2019年4月からもこの制度が5年間延長されることになりました。初回接種のみが対象で、既にPPV23を接種したことがある方は、対象とはなりません
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Q8. 高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの任意接種とは?
A
肺炎球菌ワクチンの接種には予防接種法で規定されている定期接種の他に任意接種が可能です。PCV13(プレベナー13®)は平成26年6月20日付けで、65歳以上の者に対する肺炎球菌による感染症の予防の効能・効果が承認されました。本人の希望により、自己負担で接種することは可能です。ただし、2019年4月1日時点では定期接種には含まれていないため、多くの自治体では補助の対象にはなっていません。
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Q9. 高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの再接種の必要性は?
A
肺炎球菌ワクチン初回接種から時間の経過とともに血清型特異的 IgG やOPA 活性は緩やかに低下していくと考えられます。PPV23では含まれている多くの莢膜型でのOPA 活性が5年後には低下していることが確認されています。65歳以上の高齢者でPPV23の再接種を行うと初回と同程度のOPA 活性の上昇がみられます。PPV23の再接種による肺炎球菌感染症の予防効果に関する直接的なエビデンスはまだ得られていませんが、OPA 活性から再接種の有効性が推定されます。PCV13では抗体価は1ヶ月後に上昇していたものが徐々に低下しますが、多くの莢膜型で5年後も接種前より高いことが観察されています。また、オランダでの大規模な無作為二重盲検比較試験(CAPiTA試験)で、侵襲性肺炎球菌感染症や肺炎球菌による予防効果は3年を経過しても存在していることが発生率の推移より観察されています。PCV13接種者にPCV13を4年後に再接種した際には初回よりも高いOPA 活性が得られることが報告されています。
これらのことから、再接種の有効性に関するエビデンスは十分に得られていませんが、再接種により予防効果の継続およびPCV13ではその増強が期待されます。
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Q10. 肺炎球菌ワクチンの再接種の安全性は?
A
過去5年以内に、PPV23を接種されたことのある方が、再度PPV23を接種された場合、注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも副反応の頻度が高く、その程度が強く発現する可能性があり、再接種時のアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応への注意が喚起されていました。
PPV23の再接種時の安全性についての近年の検討では、局所反応および全身反応は再接種時の方が初回接種時よりも頻度は高い傾向がみられましたが、アナフィラキシーショックなどの重篤な副反応はみられず、安全性への懸念はないとされています。
PCV13では再接種により初回接種時より高い免疫反応が得られるが安全性には問題がないことが報告されています。またPPV23接種者にPCV13の再接種を行った場合もその安全性には問題がないことが報告されています。日本臨床内科医会が実施したPPV23接種者へのPCV13の再接種においても安全性に問題はみられませんでした。
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Q11. 2種類の肺炎球菌ワクチンは、どのように使い分けるのが適切ですか?
A
PPV23(ニューモバックスNP)は高齢者の定期接種に用いられているワクチンなので、対象年齢に達した場合は各地方自治体の制度に準じて積極的に接種を受けることが推奨されます。PCV13(プレベナー13)は、抗体産生だけではなく免疫記憶を誘導する作用があり、予防効果が長期間持続するため、その接種を併用することが望ましいと考えられます。
60歳から64歳を対象として、PPV23あるいはPCV13を接種し、その4年後にPPV23を接種して、その6か月後にOPA活性を測定した成績では、PCV13を先に接種した群でPCV13に含まれている莢膜型全てでPPV23の接種によりOPA活性が、PPV23を先に接種した群より高いことが示されています。米国のAdvisory Committee on Immunization Practices (ACIP)は65歳以上の高齢者に対してPCV13の接種を行い、1年以上経過した後にPPV23の接種をすることを推奨しています。またPPV23を既に接種している65歳以上の高齢者には1年以上経過した後にPCV13を接種することが推奨されています。
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Q12. 肺炎球菌ワクチンと他の予防接種との間隔は?
A
肺炎球菌ワクチンは生ワクチンではないのでインフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンと同様扱われ、接種後7日後には他のワクチンを接種することが可能です。ただ、インフルエンザワクチンとの同時接種(同日あるいは14日以内の接種)については、海外では多数実施されており、その安全性に問題はないとされています。日本感染症学会の肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)では、PPV23とインフルエンザワクチンの同時接種には問題がないと記載されています。PCV13とインフルエンザワクチンの同時接種に関しての日本臨床内科医会の検討では、対象者数が限られていますが、安全性に問題がなかったことが報告されています。
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Q13. インフルエンザワクチンとの同時接種の意義と安全性は?
A
インフルエンザウイルスの感染により、気道上皮で炎症が起こり、上皮細胞の表面に肺炎球菌の受容体となるタンパク質(PAF受容体、PIG受容体など)が増加することが示されています。そのためにインフルエンザ後に肺炎球菌性肺炎が起こりやすくなることが考えられています。
疫学的な研究からは、肺炎球菌ワクチンの効果はインフルエンザワクチンを接種した場合に高くなることが報告されています。
肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの両者を接種することは有用であると考えられます。毎年のインフルエンザワクチンの接種の際に、肺炎球菌ワクチンの接種歴を確認して、同時に肺炎球菌ワクチンの接種を行うことは、接種者にとっての利便性を増すことができます。さらに、インフルエンザワクチンの接種時に、肺炎球菌ワクチンの接種歴を確認して、未接種者に肺炎球菌ワクチンの接種を勧奨することにより肺炎球菌ワクチンの接種率を高めることができるとされています。
インフルエンザワクチンと同時に接種することの安全性には、PPV23あるいはPCV13のどちらでも現時点で問題はないとされています。インフルエンザワクチン接種時に、肺炎球菌ワクチンをインフルエンザワクチンを接種した反対側の上腕に接種することができます。
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